2012年6月1日金曜日

世相: 2006年11月


毎日新聞(11/24)から
記事を読むと「なれ合い型」とは頼りない教師の生徒へのスリ寄りのような表現になっているが、これは結果であって、そうせざるを得ない保護者との力関係があるように思える。現在では保護者は神様のような存在で、生徒たちは神様の子どもたちなのだ。今は亡き演歌の大御所が唱え始めた「お客さまは神様です」が一般に使われるようになり、意味が取り違えられて、客の我が侭が何を、どんな無理でも、口に出せば通る世の中になってしまった。

そもそも三波晴夫の神様はチケットを買ってくれて会場を埋めてくれる客ではなく、彼自身が信ずる神様のことで、その神様への奉納の心を持って誠実に客のために歌うことだった。その結果が思い掛けない力となって歌うことができた。だから「お客さまは神様です」となったのだ。それが何時か解釈が取り違えられて、金を払えば無理が通ることの同義語のように使われ、「金を払っているのだから、"給食にいただきますは、おかしい、必要ない"、或いは"義務教育なんだから、給食費を払う必要はない"と言って滞納(不払い)する。その金は数万円の携帯の電話料金に、或いは高級外車のローンに、というようなバカが生まれる世の中になった。この金額全国で1年間に8億3千万食分に当る(産経新聞調べ)としている。当 然滞納の家庭の子も給食を口にする、予算は集まった額だけで賄うため、少なくなるから献立はどんどん貧しくなる。


フォールズチャーチの学校

ところによっては献立が貧しくなるのを心配して、滞納3年分を校長が支払った学校まである。給食だけではない。朝起きられない子の遅刻を予防するため、親神様は先生に子どもの神様を起すために電話するよう要求し、始めは受けていたが、面倒になって遂には先生の方から自宅までお伺いすることまで奉仕させられる。これが今の保護者の現実だ。勿論すべての保護者がそうでないことは分かるが、悪貨が良貨を駆逐するように、毒気の強いこの手の保護者が教室を、PTAを牛耳るのを見て、流れて行くのが現状の学校、校長、保護者、教育委員会との間のなれ合いの関係の図式になっているのではないか。

メディアは'我らこそ正義'づらして学校や教師を槍玉に上げれば(マスコミの学校、教員へのいじめだ)世論の合意が得られる、とばかりに、本来最も取り上げなければならないいじめる側の子を育て、世間に送りだす親の問題に目を瞑ったままだ。教室内でのなれ合いは、ずっと以前に始まる。敗戦でアメリカから授かった民主主義、何が民主主義か分からないまま、平等だ、公平だ、などと手探りで歩み出し、元々は基本の違う文化の上面だけを真似ようとしたのがいけなかったのだ。目の前にいる相手に"YOU"で通じる文化と、状況によって千変万化する"あなた、や 君"を持つ文化の違いを見誤ったことから始まっている。当然のように年長者に対する礼、長上に対する礼、知者に対する尊敬、などは有名無実に等しいもの� ��なって行った。家庭において大黒柱がいなくなり、女性の権利が叫ばれ、家庭内での主婦の力が大きくなってくる。男社会であった労働の場にも女性の進出が始まる。


なぜ程度が重要なのでしょうか?

それは教育の場にも持ち込まれ、聖職と尊敬された教職はまっ先に尊敬の対象から脱落し、外からの尊敬を失った教職は、自らが内部崩壊を加速させて行くことになった。そこに家庭内教育も躾もされず、ただ産み落とされただけの子どもたちが加わってくる。教師に対する言葉から尊敬が失われ、態度は友達との交友のレベルに落ちて行く。若い大学を出たばかりの教師たちは、こういった小・中学で学んだ世代だ。当初からなれ合いには馴れている。しかし、その間に一層子どもを甘やかす施策は進み、親の無責任な躾や教育の放棄は学級崩壊の根を広げて行った。些細な訓戒も体罰沙汰として攻撃の対象とされ、ジェンダーなる訳の分からない言葉で子どもたちの情操教育の芽を摘む結果となる。

人間に順番をつけることを否定した考えは、些末な運動会の1等2等までもを廃止したが、現実の社会は人間性を無視した競争原理を生み、勝ち組負け組をつくり出し、教育の嘘を暴き出している。

今回発表された河村茂雄・都留分科大教授(心理学)の調査で「なれ合い型」の学級でいじめが生まれ易いことが分かったとしているが、教師の教え子への接し方には、彼の分類によると、
 1. 有無を言わせず従わせる指導タイプ  (管理型)
 2. 子どもの言い分を尊重する援助タイプ (なれ合い型)とし、
子ども満足度の高い学級の教師は状況に応じて両方を使い分けている、としている。


"リバーフォールズ校"

なれ合い型では、当初は教師と子どが良好な関係を保つかに見えるが、最低限のルールを示さないため学級はまとまりを欠き、子ども同士の関係は不安定で喧嘩やいじめが生じ易い。教師の「・・してよ」という友達口調の指示を誰も聞かなくなり、放置すれば学級が崩壊するという。

昔は'おい''こら'で始まった警察官でさえ、今は暴走族や酔っ払い運転の取り調べにさえ'して下さい''・・なさい'の世の中だ。教師の言葉をいちいち論(あげつら)っていては話にならない。教師のしゃべり方次第では保護者の苦情の種になることは間違いない。教師の言葉尻の問題ではなかろう。親や世間、マスコミからの激しいバッシングで教師は潰され、親も子どもの前で教師を貶める言動を平気で面に表わす。馴れ馴れしく接するのは教師からではない。先生を先生と思わない保護者、子どもこそなれ合いを作り上げているのだ。

運動や勉強が得意、喧嘩が強いなどで教師が学級をまとめるのに便利な場合もあるが、その子どものグループが特定の子どもをいじめの標的にしたり、もっと広く学級全体が同調した場合は、教師が止めるのはもう困難で、いじめの助長や加担の恐れもあるという。

河村教授は「なれ合いを、どう回避し、いじめを生まない学級を作るか、教師が議論することが大切」と話している、と結ぶ。


旧来なら頬を張り飛ばして一件落着のような教師への暴言「バカ」や「死ね」に教師はどう答えたらいいのか。不馴れな教師は怒りを抑え、不安を抱えながらうわべでニコニコして見せる。これがなれ合いと表現される。私の子どもの頃は、長上に対して上のような言葉を吐こうものなら、頬つねられるか、張り飛ばされた。先生からではない、親の手で。それほど家庭の子どもへの躾や教育がしっかりとなされていた。教えを乞う人への最低限の礼儀だからだ。いじめを作っているのは子どもの育成を放棄している親たちの責任で、教授の言うような教師があれこれ議論して結論の出る問題じゃない。特にいじめる子の親との徹底的な話し合いの方が先決の問題だ。親は誰も自分の子がいじめる側にいることを信じたくないのだ。「う� ��の子に限って」は親の教育が出来ていない親ほど思い込みが激しく、常套句のように口にする。

河村教授の調査も、その対象を数だけは多い5万人の生徒の「QUテスト」(生徒にアンケートを取って集計すると学級のことが良く分かるという)と称する心理テストらしいが、パターンを単純な2種類に分類し、データを弄ぶだけの作業で何が理解できるというのか。
 これでは『労多くして益なし』の何ものでもない。



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